不動産を購入するときには、様々な税金が関係します。それだけに消費税が10%になったときに変わることも多いです。増税が不動産の購入に与える影響について説明します。
▼ 消費税が上がると影響があるもの
- 売買価格(売主が個人の場合は非課税)
- 仲介手数料
- 引越し代
- リフォーム費用
- 家具や家電
不動産の売買においては、そもそも非課税のものも含まれるので、やや複雑です。いくらくらい負担が増えるのか、増税で変わる制度についても触れていきます。
目次
売主が個人になる中古不動産の売買は消費税がかからない
消費税が課税されない不動産売買もあります。
代表的なのは、売主が個人になる中古マンションや一戸建ての売買です。
消費税が最初からかからないので、増税による影響は売買価格にはありません。しかし、不動産会社に払う仲介手数料は消費税がかかります。
例えば、売買価格3,000万円の取引で、仲介手数料が96万円+消費税なので、76,800円(消費税8%)が96,000円(消費税10%)に負担が増えることになります。
一方、売主が不動産会社になるようなリノベーション済みマンションでは、売買価格に消費税がかかります。
新築の一戸建てやマンションは、こちらもやはり売主が不動産会社になるので、物件価格に消費税がかかります。
売主が不動産会社のときは、仲介する会社がなければ、仲介手数料が発生しません。
あまり知られていませんが、実は消費税がかかるのは建物のみで、土地については非課税です。
売買価格の内訳は土地と建物価格に分かれています。土地の価格+建物の価格+建物価格の消費税=売買価格という構造です。
売買価格に括弧書きで消費税の金額が書いてあることが多いので、増税ではその消費税の金額が高くなるということです。
売買価格のうち、土地が1000万円、建物が2000万円であれば、1000万円+2000万円+160万円(8%の消費税)になります。
税率が10%になると、160万円の消費税が200万円になるということですね。
引き渡しの時期によって適用される税率が異なる
不動産売買契約では、引き渡し時期の消費税率が適用されます。
2019年10月1日に消費税率が上がると仮定すると、不動産の引き渡しが、2019年9月30日までに終われば、消費税は8%が適用されます。2019年10月1日以降の引き渡しになると、消費税率は10%ということになります。
ここで覚えておきたいのは、売買契約日ではなくて、引き渡しの日の税率ということです。つまり、2019年9月30日までに引き渡せるように駆け込み需要が高まるのです。
売買契約においては、引き渡しの日は契約の際に決めることになります。竣工済の建物であれば手続き後、すぐに引き渡しを受けられることがほとんどです。
住宅ローン利用の場合は、契約から引き渡しまでに1ヵ月程度みます。現金購入であれば1週間から2週間程度で引き渡せます。
引き渡し時期にかかわらず消費税8%が適用される経過措置
一部例外があり、売買契約ではない請負契約には特例があります。
消費税の増税の6ヶ月1日前にあたる2019年3月31日までに結ばれた請負契約については、引き渡し時期にかかわらず、消費税8%が適用されるというものです。これは、前回の5%から8%への増税の時にもあった特例です。
請負契約とは売買契約と異なり、ものを作ってもらう工事契約のことです。分譲マンションや建売住宅のように、すでに形のある不動産を購入するものは売買契約と呼ばれます。
例えば、注文住宅は売買契約ではなく、家を作ってもらうので請負契約にあたります。分譲マンションや建売住宅でもオプション工事等の、ものを作ってもらう工事があれば、請負契約になります。
売買契約のほかに請負契約もあれば、売買契約書の価格も8%が適用されます。注文住宅に代表されるような請負契約は、工事の進行度次第では、引き渡しの日が延びるということは珍しくありません。
建物自体の引き渡しは期日までに引き渡されても、最後になる外構工事が引き渡し日よりも後になることは多いです。
消費税8%で引き渡しを受けるつもりだったのに間に合わなかったケースを保護するために特例が設けられています。
8%に増税された時に起こったこと
2014年4月1日に消費税が5%から8%になりましたね。
前々から言われていた通り、消費税が増税される前に引き渡せる物件に人気が集中しました。
それに伴い引っ越しも需要が高まり、さらに年度末だったこともあり、引越しのトラックの手配だけでもパンクするほどでした。
住宅ローンの受付についても、人気のあったネットバンキングは通常よりも待たされた例がありました。
増税後の住宅ローン控除の拡充や、すまい給付金の開始が発表され、年収が高い人は拡充後の住宅ローン控除の方がお得であるという広告も一部にはありました。
2019年10月の増税になると、その数ヶ月前から駆け込み需要が発生すると考えられますが、もともと4月から夏頃までは不動産業界は閑散期です。
そのあとの9月や10月が年度末に次ぐ繁忙期になります。
9月からの売買契約ですと、9月30日までに引き渡すことがギリギリなので、8%に増税された時に比べて駆け込み需要は、前倒しや分散するのではないかと思います
また、住宅ローン控除の拡充が今回の増税では予定されていないため、年収が高い人にとっても、増税後にはメリットが今のところありません。
すまい給付金が増える
消費税率が8%になるときに始まったすまい給付金制度は、今後10%に上ったときに、支給される金額が増えます。
今のところ、消費税の増税で目玉になるのは、頭金を親から援助されたときの非課税枠の拡充とすまい給付金の二つです。
消費税8%の間は、都道府県民税の所得割9.38万円以下(年収およそ510万円以下)の人を対象に10万円・20万円・30万円のいずれかの給付金が貰えます。
消費税が10%になると、都道府県民税の所得割17.26万円以下(年収およそ775万円以下)の人を対象に、10万円・20万円・30万円・40万円・50万円のいずれかの給付金が貰えます。
所得割7.6万円(年収およそ450万円以下)の人で50万円の給付金になるので、消費税で増える何十万円かの負担を減らすことができます。
年収の上限はおよそ775万円の人で、10万円が貰えるようになります。
ちなみに個人が売主の中古不動産の購入では、先ほど説明した通り、消費税がそもそもかからない取引のため、すまい給付金の対象外です。
新築もしくは、不動産から購入する中古住宅がすまい給付金の対象です。
頭金の援助を受けたときの贈与税の非課税
住宅取得を目的とした贈与については、直系尊属からのものに限り、非課税の贈与の枠があります。税率が10%になった直後は、一時的に非課税の枠が大きくなります。
▼ 現状
▼ 消費税が10%になった場合
平成32年4月~平成33年3月の契約・・・1,500万円(一般の住宅)
両親や祖父母からの資金的援助がない人には関係がない制度になってしまいますが、ここまでの大きな非課税の贈与はなかなかできません。
消費税に合わせて住宅を購入するのは難しいかもしれませんが、増税後の減税措置でどれだけ自分が使えそうなものがあるのか確かめておくのもいいかもしれません。