住宅ローンの審査が行われる仕組み
住宅ローンは、住宅金融支援機構のほか、銀行や農協といった金融機関からさまざまな商品が提供されています。
しかし、契約を結ぶに当たって必要となる審査の内容は、どの金融機関でもほぼ似たようなものです。
家を買いたいと思っている人から融資の相談を受けた場合、金融機関では、利用者自身および購入しようとしている物件についてそれぞれ審査を行うことになります。
このとき、利用者について調べられるのは、主にその人に十分な支払い能力が備わっているかどうかという点です。
年収や勤め先の情報は大きな判断材料になりますが、そのほかにも家族構成や勤続年数、現在と過去の借入の状況など多くの事柄が勘案されます。
住宅ローンは、10年から30年といった非常に長い期間返済を続けていくことになるので、なるべく収入面で安定した利用者が評価されることになります。
また、家族構成などのデータから、その家庭が毎月どの程度の出費を必要としているかという点も考慮されるでしょう。
では、これらの情報を金融機関がどのようにして入手するのかというと、年収に関しては源泉徴収票や確定申告書の控えの提出を利用者に求めています。
また、家族構成などは住民票の写しによって知ることが可能です。
しかし、過去の借入や返済の状況については利用者の自己申告だけでは判断することができません。
その場合、個人が利用した借金の履歴や返済状況などのデータを保存している機関があれば、そこに問い合わせればよいということになります。
cicというのは、このような情報を取り扱っている個人信用情報機関のうちのひとつです。
金融機関では、これらの情報を総合的に判断した上で、住宅ローンの融資が可能かどうかを決めています。
cicとは?
cicという名称は、CREDIT INFORMATION CENTERという言葉の頭文字から取られています。
この個人信用情報機関は、クレジットカード会社らが設立していた3つの信用情報機関が合わさって誕生しました。
現在では、クレジットカードを発行している信販会社だけでなく、多くの銀行や金融機関、信用保証会社なども加盟しています。
cicに保存されているのは、個人のクレジットカードの使用履歴や、金融機関から借り入れたローン、割賦商品の支払い歴、および残債額などのデータです。
この中には、携帯電話料金が毎月きちんと支払われているかといった情報も含まれていて、これらの情報は、クレジットヒストリーとも呼ばれています。
cicとは、企業や個人からの問い合わせを受けた際に、こうした利用者の信用情報の提供を行っている会社です。
cicのデータを主に利用しているのは、金融機関だけでなく、保険会社や分割払い契約で商品を販売している企業など、さまざまな業種の法人や組織です。
住宅ローンを提供している金融機関でも、cicの持っている信用情報を確認することで、利用者の支払い能力に関して調査をすることが可能になっています。
しかし、住宅ローンの契約に際しては、金融機関は保証会社を通すことが常です。
ローン契約者からの支払いが滞ったときには、これらの保証会社が債務の肩代わりをすることで、金融機関に借入金を清算するという形が取られています。
そのため、cicに実際に問い合わせを行うのは、金融機関と提携している保証会社になります。
cicでは、オンラインから照会することでリアルタイムに情報を取得することが可能です。
また、利用者のクレジットヒストリーついても、変更や追加があれば即座に信用情報に記載されることになります。
どのような信用情報が紹介される?
では、住宅ローンを契約するとき、金融機関や保証会社ではcicの信用情報のうちどのような点を参考にしているのでしょうか。
整理すると、cicの信用情報には次のような事柄が記載されています。
利用者の住所氏名および生年月日、どんな商品を利用したことがあるか、その支払い状況や残金に関してはどうなっているかなどです。
支払いの遅延や延滞があった人は、そのことについてもデータとして記録されています。
金融機関ではこういった情報の中から、利用者が過去に金融事故を起こしていなかったかどうかをまず調べることになります。
借金の返済が滞っていたり、債務整理をして完済できなかった経験がある利用者では、審査に通ることが厳しくなるケースがあるでしょう。
cicでは、金融商品の申し込みについては申込日から半年間、債務整理や延滞などの事故情報は返済から5年間保存される決まりになっています。
注意しておかなくてはいけないのは、ローンへの申し込みを何度も繰り返した場合にも、金融機関ではこうした利用者を避ける傾向があるという点です。
事故情報などがなければ、実際に融資をした場合にきちんと支払いを行ってもらえるかについての審査に移ります。
金融機関ではこのとき、利用者の返済比率というものを計算します。
返済比率とは、これから融資する住宅ローンと現在契約中のローンなどを合わせたとき、収入のどれくらいが返済に充てられるかという割合のことです。
返済比率がおよそ30%~40%くらいまでであれば、融資を受けられる可能性が高くなります。
cicは、申込者のクレジットヒストリーを提供することで、住宅ローンの審査のうち支払い能力の審査に関わっていると言うことができます。