住宅ローンの基礎知識

注文住宅を建てる際に利用すると便利なつなぎ融資とは?

つなぎ融資とは?

つなぎ融資とは、簡単にいうと、住宅ローンを借りる前に一時的に支払いをする必要があるときに利用するローンです。

住宅購入するまでの流れと住宅ローンの仕組みのおさらい

つなぎ融資は特に注文住宅(請負契約)と密接な繋がりがあります。

家の購入は売買契約と請負契約の2通りがある

売買契約と請負契約の話の前に、まず、住宅購入は大きく、大きく3つのパターンがあると認識しておきましょう。

  1. 建売一戸建ての購入
  2. 分譲マンションの購入
  3. 注文住宅の建築

この3つの中で、建売一戸建て、分譲マンションの購入は、すでに家(またはマンション)が建っている状態ですが、注文住宅は色々と要望を出していきながら、これから家が建っていきます。

住宅購入において、建売一戸建て、分譲マンションの購入は売買契約、注文住宅の建築は請負契約と呼ばれています。

そもそも住宅ローンは家が建っていないと組めない

住宅ローンは、購入する家にお金を貸す側が抵当権(ていとうけん)を設定し、家を担保にして融資します。

そのため、住宅ローンは、融資を受けるときに家が完成していないと借りられません

家やマンションが完成すると、表示登記という「〇〇の住所に〇〇構造の建物がありますよ」という人間で言う出生届のようなものを提出し登録します。

登記登録がされて初めて、住宅ローンの申し込みができるようになるのです。

売買契約となる、建売一戸建て、分譲マンションの購入は、家がすでに完成していて表示登記も登録済なので、住宅ローンもすぐに申し込むことができます。

また、中古住宅を購入する場合であっても、すでに家がある状態なので、同様に住宅ローンの申し込みが可能となります。

反対に、注文住宅の建築は、担保にする家がまだ建っていない請負契約のため、このままでは住宅ローンの契約をすることはできません。

住宅ローンを組めないのに建築段階でお金を払う注文住宅

注文住宅はつなぎ融資が必須

家の購入代金は、売買契約と請負契約いずれの場合も、民法で完成した時に引き渡しと支払いがおこなわれると定められています。

しかし、建設業では請負のその金額も大きく、完成した時にしかお金が入らないとなれば、請け負った業者も大変です。

そのため、建物の完成したときに代金をすべて払うのではなく、下記のタイミングで建築途中に何回かに分けて払うのが一般的です。

  • 建築が始まったとき(着工金)
  • 上棟したとき(中間金)
  • 完成したとき(最終金)

家を建てるための土地を借りるか購入した後で、建築業者に着工金を支払うことで工事が始まります。

このときに必要となる着工金は、工事費用全体の3割程度と、一般人からすれば大金を支払わないといけません。

また、工事期間中にも中間金、家の完成時には建築費の残り全部となる最終金(引渡金)を支払う必要があります。

引き渡し時にすべての代金を払うマンションや建売の購入と違い、注文住宅では建物が完成したときには、上記のタイミングで6~7割程度は支払いが終わっているのです。

注文住宅が完成するまでの支払いを「つなぎ融資」で補う

例えば、3000万円の注文住宅を計画していれば、1800万円~2100万円が住宅ローンの融資がされる前に支払います。

しかし、先にお話したように、建物が完成するまでは、住宅ローンを契約しての融資はしてもらえません。

そこで、注文住宅が完成するまでの支払いは、「つなぎ融資」を活用して、土地取得費や建築費用を補います。

つなぎ融資を受けるためには?

つなぎ融資を受けるためには?

つなぎ融資が利用できる銀行で、住宅ローンの事前審査の承認をまず取ります。

つなぎ融資は建物が完成した時の住宅ローンで完済しますよ、ということが前提のローンのため、住宅ローンが借りられることが条件です。

住宅ローンの借入先とつなぎ融資の借入先は同じ銀行になるのが原則です。

つなぎ融資の手続き

つなぎ融資の契約そのものには、それほど難しい手続きはありません。

つなぎ融資の申し込みをして、金銭消費貸借契約を交わしますが、これは、住宅ローン自体の申込みとは別なので、つなぎ融資を希望する場合は、どちらも別々で契約をする必要があります。

そのため、事務手数料や印紙代などはそれぞれに支払わなくてはいけません。

また、金利については住宅ローン本体よりもやや高く設定され、金融機関によっては、契約時に団体信用生命保険に加入することが追加条件として加えられている場合もあります。

つなぎ融資は住宅ローンとは異なる

つなぎ融資と住宅ローンは同じ金融機関からの融資サービスのことを指していますが、つなぎ融資と住宅ローンには異なる点と、注意しないといけない点があります。

まず1番異なる点は金利です。住宅ローンは金利が1%を切っていることも多いですが、つなぎ融資は住宅ローンとは異なり、金利が高めです。おおよそ年利3%ほどです。

住宅ローンは、住宅を担保にすることができますが、つなぎ融資では担保にする住宅がまだありません。そのため、無担保融資になり金利が高いのです。

ただし、「あくまで建築が終わるまで」の借入なので、年利3%を借入日数で日割り計算します。

つぎに異なるのは、取り扱っている金融機関の数。住宅ローンは多くの銀行で借りられますが、つなぎ融資は取り扱いがない銀行もあります。住宅ローンに比べると、選べる銀行が限られます。

住信SBIネット銀行や三菱UFJ銀行などは、住宅ローンで人気のある銀行にも関わらずつなぎ融資を取り扱っていません。

注意が必要なことは3つあって、まず、つなぎ融資は、住宅ローンを前倒しで借り入れるような仕組みなので、返済計画は、つなぎ融資と住宅ローンは一体で考える必要があります。

また、住宅ローンの契約とは別に、つなぎ融資用に手数料と印紙代がかかります。

さらに、つなぎ融資は住宅ローン控除も受けられないので、注意しておきましょう。

つなぎ融資の融資期間はどれくらい?

融資期間は、6カ月間のものや1年間のものなどが一般的です。

つなぎ融資を利用して家を建てる人は、この間に土地の取得から建築工事の開始、住宅の完成まですべてを終わらせなくてはいけません。

先に書いたように、住宅ローンの融資の実行によってつなぎ融資の清算が行われるからです。

契約に際しては、建築業者と交わした建築請負契約書を提出しなくてはいけないケースもあるので、建築計画は早めに立てておくことで、家ができ上がるまでの過程を滞りなく進める必要があります。

つなぎ融資の利息

利息の計算は融資金額×年利×利用日数÷365日で求めます。

例えば、着工金と中間金で800万円ずつの請求があり、つなぎ融資を利用する際の年利が3%と仮定した場合、利息は次のようになります。

着工金
800万円(利用日数120日)
利息78,904円
中間金
800万円(利用日数90日)
利息59,178円

※着工金→中間金の順で払うので、中間金は借り入れている日数が着工金よりも短くなります。

別途手数料や印紙代がかかるので、上記の例の場合は、合計約20万円はつなぎ融資の経費が発生します。

つなぎ融資は800万円を120日間で返すローンではなく、その債務は建物が完成したら、住宅ローンの融資金で完済します。

建物が完成して、引っ越すときには、通常の住宅ローン1つになるというイメージです。

必要経費として負担は増えるが、自己資金が少ないときに注文住宅を建てるためにはつなぎ融資が必要でしょう。

土地の購入も検討している、建築期間の延長などで利息負担が増える可能性もある

さらに、住宅の建築は天候次第では遅れることもあるので、引き渡しがずれたときの利息の負担増も頭の中では入れておく必要があります。

もし、注文住宅だけでなく、土地も購入してから建築を検討しているときに、土地もローンを考えていれば、土地もつなぎ融資で賄うことになります。

住宅ローンが融資されるまでが借入期間になるので、土地のつなぎ融資は建築期間ずっと借りていることになります。

一般的な住宅の工期は、短くても4か月です。ただし、着工の前に土地の契約と売買代金の支払いがあるので、実際には土地のつなぎ融資は4か月以上は借りなければなりません。

土地で2000万円のつなぎ融資を年利3%で4か月借りたときの利息は、197,260円です。

自己資金で負担できるならつなぎ融資分を少しでも支払いにあてる

つなぎ融資では、利息や手数料の支払いは、つなぎ融資が実行された時、毎月払いなど銀行によって違います。

利息がつなぎ融資実行時に一括払いの場合は、融資金から利息分を引いて振り込まれることがあり、不足する部分を自己資金で賄う必要があります。

前払いした利息も、工期が伸びたときは追加で利息を払うことになります。

自己資金で少しでも、つなぎ融資が減らせるのであれば、借入期間が長くなるものや借入金額が高いものから優先的に充てると良いでしょう。

つなぎ融資を利用した支払いの流れ

では、実際につなぎ融資を受けた場合の、支払いの流れはどのようになっているのでしょうか。

つなぎ融資による資金の貸付けは、通常3回程度に分けて行われます。

まず最初の段階で、土地取得のための資金を受け取ることができます。

融資金の使い道に関しては、特に金融機関によって定められているわけではなく、受け取ったお金を建築業者との契約金などに充てることも可能です。

また、この融資によって土地取得費用のほぼ全額が支払えることになるので、家作りに際しての大きなハードルの1つを超えられたと言ってよいでしょう。

次の段階では、実際に工事を始めるための着工金が融資されることになります。

着工金の額も小さなものではありませんが、それを融資によって補えるため、利用者の初期負担を大きく減らすことができます。

最初の融資から2回目の融資までは、融資期間が6カ月間の契約であれば約2カ月程度の間が置かれるため、それぞれの融資を一度に、あるいは連続して受け取れるわけではないことに注意しておいてください。

3度目の融資は、工事費用の中間金に対して貸し付けが行われ、着工金と中間金については、建築請負契約金額の3割程度まで借り入れることができます。

その後に残っているのは、住宅完成後に支払うことになる引渡金のみとなりますが、これに対しても融資が行われるか、あるいは住宅ローン本体の融資の実行によって残金に充てられる形になります。

一つだけ気をつけておかなくてはいけないのは、つなぎ融資によって土地だけを購入するといった使い方はできないという点です。

つなぎ融資というのは、あくまでも家を建てたい人のために用意されているローンとなっています。

つなぎ融資のポイントまとめ

つなぎ融資はマイホーム購入をする人が全員利用するローンではありません。

  • 自己資金が少ないときに中間金の支払いがあるときは、つなぎ融資を利用する
  • 住宅ローンでつなぎ融資分は完済して、住宅ローンとして返済をしていく

住宅ローンは借りられない建築段階で、ローンを組む方法です。借り入れる金額に応じて、利息や手数料の数十万円の準備で前倒しでローンを借りる方法と覚えておきましょう。

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